目次
- ① はじめに|「脱ステ+脱保湿」は過酷だけど、回復の道
- ②私の場合|30年以上アトピーと向き合って
- ③リバウンドは必ず起きる|その理由と仕組み
- ④ 「脱ステ・脱保湿」の二段階療法と保湿剤の科学的リスク
- ⑤ 肌の変化と6段階の回復過程
- ⑥ まとめ|脱ステ・脱保湿は時間と信念が試される療法
【徹底解説】脱ステロイド・脱保湿の二段階療法|皮膚の治癒力を取り戻す科学と実践
① はじめに|「脱ステ+脱保湿」は過酷だけど、回復の道
アトピーの治療では、ステロイドやプロトピック(タクロリムス)といった
外用薬が長期に使われることが少なくありません。
これらの薬は一時的に炎症やかゆみを抑えてくれますが、
長期間の使用によって副作用が現れることもあり
酒さ様皮膚炎の発症や、中々治らずにより強い薬へと切り替わって
悪循環に陥るケースもあります。
さらに、薬をやめたときには「リバウンド」と呼ばれる激しい
再発反応が起こり、症状がかえって悪化してしまうこともあります。
また、多くの人が「乾燥には保湿」と信じて、保湿剤を毎日のように塗り続けています。
しかし近年では、保湿がかえって皮膚の自然な
回復を妨げている可能性があるという見方も広まりつつあります。
私自身も、30年以上重度のアトピーに悩み、長く薬と保湿に頼ってきましたが、
「脱ステロイド」と「脱保湿(脱軟)」を実践したことで、今は完治に近い状態まで
回復することができました。
② 私の場合|30年以上アトピーと向き合って
私は小児期から重度のアトピーに悩み、
30年以上、炎症とかゆみに苦しんできました。
肘や首、膝裏の炎症から始まり、
思春期以降は顔や首にまで広がり
ステロイドとプロトピック常用が
当たり前になっていました。
しかしステロイドの長期使用で
酒さ様皮膚炎赤ら顔になってしまい
顔がパンパンに腫れてしまって
「脱ステ+脱保湿(脱軟)」に
塩素除去対応シャワーヘッドと食事療法の組み合わせで寛解に向かっていきました。
塩素が肌に与えるダメージが大きいので
(お風呂に入る時はアトピー肌用に開発した入浴剤
みんなの肌潤風呂で半身浴がオススメです。)
脱ステして数週間〜一ヶ月は汁が溢れて炎症しその後
それが乾いての何度も繰り返していくうちに、
汁が止まりガサガサの乾燥肌に落屑も少しずつ落ち着き
6ヶ月くらい時間をかけながら、汗が出るようになり、しっとりとした肌質が戻ってきました。
気がつくと、あれほど悩まされていた首や顔の赤みも消え、肌が壊れにくくなっていたのです。
「乾燥=悪」「保湿は必須」という思い込みから離れ、皮膚が鍛えられていく過程に信頼を置くことが
アトピー完治
②
リバウンド=“炎症の蓄積の爆発”という現象
脱ステ直後に起きる皮膚の悪化反応は、リバウンド反応(rebound flare)と
呼ばれて長期的にステロイドや免疫抑制剤を使用しているほど
- 表皮免疫細胞(Langerhans細胞)やT細胞の異常活性
- 真皮の血管透過性の増加(→浸出液が出やすい)
- 副腎皮質機能の一時的な抑制(HPA軸の不全)
などが複合的に関与していると考えられています。
※参考:Sato K et al. 1996, Sugisaki et al. 2013
化学的な知見
- 皮膚のバリア機能が失われている(角層が壊れている)
- 感覚神経が過敏になっている(TRPV1の発現上昇)
- 炎症性サイトカイン(IL-4, IL-13, IL-31など)が増加
「痛い・痒い・赤い・汁が出る」といった地獄のような状態が数週間〜数ヶ月続くことがあります。
通常リバウンドのピークは1〜3週間後に現れ、最終段階は3〜6ヶ月程度で収束すると言われています(個人差あり)。
4 「脱ステ・脱保湿」の二段階療法と保湿剤の科学的リスク
▶︎ ステロイドをやめるだけでは治らない?
脱ステロイドを行っても、ワセリン・ヒルドイド・アズノール・馬油などの保湿を続けていると、皮膚の回復が遅れることがあります。
これは、外部からの「潤いの補給」が皮膚本来の再生機能を妨げているためです。
▶︎ 佐藤健二医師の提唱「脱保湿(脱軟)」とは?
皮膚が赤く腫れている間は、保湿剤を塗らず、乾燥させることが必要
— 『患者に学んだ成人型アトピー治療』
▶︎なぜ「乾かす」ことで皮膚は強くなるのか?
- 角質層のターンオーバー正常化 → 剥がれた表皮が自然再生
- 自己産生セラミド・NMF再起動 → 外部油分で皮膚が怠ける
- 痒みの慢性化防止 → 湿った環境は掻破を誘発する
ステップ | 内容 | 主な症状 | 回復サイン |
---|---|---|---|
第1段階 | ステロイド・プロトピックの中止 | リバウンド・赤み・汁 | |
第2段階 | ワセリン・中止 | ガサガサ・落屑・色素沈着 |
▶︎科学的に見た「保湿剤のリスク」
ステロイドと同様に「肌に優しい」と思われている保湿剤も、皮膚科学の観点からは以下のようなリスクが報告されています。
リスク①:バリア機能の“代行”による怠惰化
皮膚は本来、NMF(天然保湿因子)やセラミドを自力で産生する機能を持ちますが、
保湿剤を塗り続けることでそれが働かなくなります(角化異常・慢性依存)。
リスク②:アジュバント作用とアレルゲン浸透
ワセリンや一部の油脂性基剤には、外的抗原(花粉、金属、ダニなど)の皮膚侵入を助ける働き
(アジュバント作用)があることが報告されています。
(Muto T et al., 2003, Allergy.)
リスク③:炎症性サイトカイン誘導
植物油や乳化クリームに含まれる界面活性剤は、IL-4・IL-31などアレルギー性炎症を悪化させる
サイトカインの分泌を促進する可能性があることが示唆されています。
こうした理由から、佐藤健二医師らは「皮膚が赤いうちは一切塗らない」
という脱保湿(脱軟)方針を取っています。
リスク④:慢性湿潤による「掻破ループ」
保湿でしっとりした肌は、かえってかゆみを誘発しやすく、掻く→傷つく→また塗る、という悪循環に陥ることも。
このような根拠に基づき、脱ステロイドだけでなく
脱保湿も並行して行う必要性が明らかになっています。
乾かす=治す、という発想の転換が、
皮膚の再生にとって最も重要な鍵です。
▶︎ ステロイドをやめるだけでは治らない?
多くの人が「ワセリン」「アズノール」「ヒルドイド」「馬油」などを使い続けることで、炎症の慢性化・皮膚の回復遅延を招いています。
5 肌の変化と6段階の回復過程
脱ステ・脱保湿を実践していると、多くの人が経験する肌の変化には一定の段階があります。
ここでは、回復のプロセスを6つのステージに分けて解説します。
- ジクジク期(滲出液を伴う赤い肌)
黄色く粘り気のある液体が出て、強い炎症と痛み・痒みを伴う。
細菌感染の恐れがあるため、この時期は脱ステ専門医の管理下が望ましい。 - ヒリヒリ期(湿潤+浮腫のある赤肌)
汁が止まりつつあるが、触れるだけでも痛い。バリア機能は未回復。 - ガサガサ期(瘡蓋と乾燥した皮膚)
乾燥が進み、かさぶたやひび割れが目立つ時期。
表皮のターンオーバーが少しずつ動き始める。 - ポロポロ期(落屑・皮むけ)
掻くと細かいフケ状の落屑が出るが、
下の皮膚がやや強くなってきており、傷が浅くなる。 - ゴワゴワ期(肥厚・色素沈着)
角質が厚く、皮膚はやや黒ずんでいる。
この時期は「治っていないように見える」が、実は肌が強くなりつつある状態。 - ツルツル期(正常肌)
赤み・汁・落屑がすべて消え、皮膚に艶が戻る。
外的刺激にも強くなっており、完治のサインともいえる。
※多くの場合、このステップを3〜12ヶ月かけて経過します。
途中で行き来することもあるため、一方向的な回復ではないことに注意が必要です。
脱ステ・脱保湿で回復していく肌の「6段階」チャート
私は、ステロイドをやめてから 「ジクジク → ヒリヒリ → ガサガサ → ポロポロ → ゴワゴワ → ツルツル」という順に肌が変化していきました。
この回復過程を知っておくことで、「今のつらい状態は回復の途中なんだ」と実感できるはずです。
段階 | 肌の状態 | 症状の特徴 | 肌の色 | 備考 |
---|---|---|---|---|
① ジクジク期 | 浸出液を伴う赤い肌 | 黄色くにおう汁が出て、アトピーが全身に広がる | 赤〜ピンク | 感染リスクあり。あまりに酷い場合は脱ステ専門医のもと入院を |
② ヒリヒリ期 | むくんだ赤い肌 | 汁が止まりはじめるが、焼けるような痛みあり | 赤〜褐色 | 風や入浴も刺激になる。皮膚が過敏な時期 |
③ ガサガサ期 | かさぶた+傷のある乾燥肌 | かさぶたが固まり、下の皮膚はまだ炎症 | 黒褐色〜茶 | 赤みは減るが突っ張り感やひび割れも |
④ ポロポロ期 | 落屑(らくせつ)・フケのような皮 | 掻いても下に新しい皮膚が育っている | 褐色〜赤茶 | 皮膚の再生が進む時期 |
⑤ ゴワゴワ期 | 角質肥厚・色素沈着 | 掻いても肌が強くなってきている | 茶〜灰色 | 皮膚が固く、強さが戻ってくる |
⑥ ツルツル期 | 正常な艶のある肌 | 乾燥が落ち着き、しっとりとした皮膚に | 正常色 | 汗が出るようになり、痒みも減る |
回復のポイント
- 「赤 → 褐色 → 茶色 → 灰色 → 正常色」へ変化
- 「汁 → かさぶた → 赤み → 落屑 → 色素沈着 → 健常肌」へ進む
- 掻いても肌が壊れにくくなり、徐々に「皮膚が強くなる」
- 段階が進むごとに、落屑が細かく、乾燥の回復が早くなる
今が「ジクジク」「ガサガサ」でも、あきらめないでください。
肌は確実に、あなた自身の力で再生していきます
⑦ まとめ|脱ステ・脱保湿は時間と信念が試される療法
脱ステロイド・脱保湿の二段階療法は、単に「薬や保湿をやめる」という選択ではありません。
それは皮膚の自然治癒力を最大限引き出すという、科学的かつ根源的なアプローチです。
時間軸で見る回復
- 1〜4週:リバウンドのピーク、汁・痛み・発赤が最大に
- 1〜3ヶ月:乾燥と瘡蓋、落屑を繰り返す
- 3〜12ヶ月:皮膚の強化、汗が戻り始める
よくある誤解を整理
- 「乾燥は悪」ではない → 乾かすことで皮膚は鍛えられる
- 「脱ステですべて治る」わけではない → 脱保湿と生活改善が不可欠
- 「保湿なしでは生きていけない」は錯覚 → 自然皮脂は最強のバリア
他の療法との違い
保湿中心の皮膚科療法、プロアクティブ療法、漢方や食事療法とも並行可能ですが、
「まず皮膚を強くする」ことに軸足を置く点が最大の特徴です。
エンパワーメントとして
「皮膚は再生する臓器」です。
治らないと思っていた皮膚も、正しいケアをすれば必ず回復します。
孤独にならず、信頼できる情報と仲間を見つけながら、日々を乗り越えていきましょう。
参考文献・データベース
- Sato K et al. “Adult-type atopic dermatitis and non-steroidal treatment outcomes.” J Dermatol. 1996.
- Sugisaki K, Sato K. “The mechanism of rebound phenomenon after steroid withdrawal.” Jpn J Dermatol. 2013.
- Muto T et al. “Sensitization to petrolatum: an unusual cause of false-positive drug patch-tests.”
Allergy. 2004 Sep;59(9):1013-4.
DOI: 10.1111/j.1398-9995.2004.00452.x;
PMID: 15291911 - 若林あや子 他(2006–2008)
「水道水中の残留塩素による免疫系・アレルギーへの影響に関する研究」
科学研究費補助金(基盤研究C)成果報告書:課題番号18700614
https://kaken.nii.ac.jp/…/18700614seika.pdf - 佐藤健二『患者に学んだ成人型アトピー治療』協同医書出版社, 2008年.
- 日本皮膚科学会:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン(2021)
コメントを残す